SMCコラム

経営方針管理と目標管理2(目標管理とマネジメント、動機づけ)

3.目標管理とマネジメント

目標管理では、経営方針管理によって展開された部下のテーマや目標を、上からの押し付けではなく、部下が自律的に動機づけして行動できるように上司がマネジメントすることが重要です。
目標管理を成功させるには、上司による適切なマネジメントが非常に重要で、「マネジメントは目標管理と一体」といっても過言ではありません。
目標管理制度の運用が困難になる原因としては、上で説明した経営方針管理機能の無理な取り込みだけではなく、上司のマネジメント能力が不足しているケースも多数あります。

ここで目標管理の祖であるドラッカーが定義しているマネジャーの仕事について確認しましょう。

あらゆるマネジャーに共通の仕事は5つである。
①目標を設定する
②組織する
③動機づけとコミュニケーションを図る
④評価測定する
⑤人材を開発する
もちろん、目標を設定するというだけでマネジャーになれるわけではない。狭いところで糸を結べるだけでは外科医になれない。しかし、目標を設定する能力がなければ適格なマネジャーにはなれない。それは、糸を結べなければ優れた外科医になれないのと同じである。糸を結ぶ技能を向上させれば、それだけ外科医として進歩するように、マネジャーもこれら5つの基本的な仕事すべてについて、自らの能力と仕事ぶりを向上させれば、それだけマネジャーとして進歩する。

P.F.ドラッカー著 上田惇夫編訳 『マネジメント エッセンシャル版 基本と原則』(ダイヤモンド社、2001年、129頁)

まさにマネジャーの仕事として、「動機づけとコミュニケーション」が挙げられています。これらが欠けていると目標管理はうまくいかないのです。

そしてドラッカーは、目標管理について次のように述べています。

「目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようになることにある。自己管理は強い動機づけをもたらす。適当にこなすのではなく、最善を尽くす願望を起こさせる。したがって目標管理は、たとえマネジメント全体の方向づけを図り活動の統一性を実現するうえでは必要ないとしても、自己管理を可能とするうえで必要とされる。(中略)自己管理による目標管理は、人間というものが責任、貢献、成果を欲する存在であることを前提とする。」

P.F.ドラッカー著 上田惇夫編訳 『マネジメント エッセンシャル版 基本と原則』(ダイヤモンド社、2001年、140頁)

目標管理は、部下に対して「自らの動機づけ」のために「自己管理」させるための方法論です。マネジャーが目標やテーマを設定する際、決して押し付けがあってはなりません。
しかしながら現実には、マネジャーが部下に目標を押し付ける事例は枚挙にいとまがありません。

動機づけや部下自身の仕事の捉え方については、次章以降で「能動的義務」「受動的義務」という視点を用いて解説します。

さて上記引用の最後に、『自己管理による目標管理は、人間というものが責任、貢献、成果を欲する存在であることを前提とする。』とあります。
これは目標管理制度を運用する際に、非常に重要な前提です。

皆様の会社にも「常に指示待ちで、言われたことを言われたとおりにしかできない社員」が存在するでしょう。自己管理を放棄し、組織から統制を受け続ける状態の社員です。

このような社員には『人間というものが責任、貢献、成果を欲する存在であることを前提』とした目標管理は通用しにくいといえます。
たとえば、まだ自己管理ができていない初級層に目標管理を適用すると、自分で目標を立てられず目標管理シートに無意味な目標を羅列してしまうケースがあります。こういった場合には目標管理の適用範囲の見直しをお勧めします。

なお、当社が提唱する「 マネジメントの10要素 」とドラッカーが定義した「マネジャーに共通の仕事(上述)」は下表のように対応しています。

図表1.マネジメント要素対応表

ドラッカーが定義した
「マネジャーに共通の仕事」

当社が提唱している
「マネジメントの10要素」

①目標を設定する

①経営(事業)戦略を深く理解する
③部下と共に適切な部門戦略・目標を策定する

②組織する

②与えられた資源を分析・把握する
③部下と共に適切な部門戦略・目標を策定する
④部下と共に効率的で効果的な戦術を構築する
⑤部下と共に具体的な計画を立てる
⑨部下に必要に応じて行動修正を指示する

③動機づけとコミュニケーションを図る

⑥部下に期待をかけて仕事を任せる
⑦部下と密にコミュニケーションを図りながら動機づける

④評価測定する

⑧部下の行動内容と行動結果を承認する

⑤人材を開発する

⑩部下を成長させながら、自部門の成果を上げる

4.能動的義務と受動的義務

経営方針管理は企業経営に必要不可欠なマネジメントプロセスです。マネジャーは自部署の方針を展開し、等級制度にもとづいて部下の力量や育成方法を検討したうえで個々人にテーマを割り振る必要があります。
しかしマネジャーが一方的にテーマを与えると「統制」となってしまい、部下は動機づけされません。「統制」されると、部下は与えられたテーマを「受動的義務」と捉えるからです。
上司などの他者から与えられる目標は受動的義務に過ぎず「やらされ感」が募り、動機づけどころか、最終的には目の前の実務に埋没してしまうだけになってしまう可能性も高まります。

目標管理制度を組織内で正しく機能させるには、部下が「自律的に動機づけできる状態」を作る必要があります。そういった状態のもとでは、部下はテーマを「能動的義務」と捉えています。
仕事(テーマ)を能動的義務と捉えるか受動的義務と捉えるかで、動機に大きな差が生じるので、部下へのテーマの与え方はマネジメントするうえで大きな課題です。

この課題をうまく乗り越えないと、経営方針管理と目標管理をうまく連動させるのも困難になりがちです。
この課題を解決するために、「動機」について解説します。

5.動機とは

動機とは、ある目標に到達するための達成意欲です。意欲を最大化するには、個人が自律的に動機づけしている必要があります。いわゆる「内発的に動機づけられている状態」です。
内発的動機を持っていると、人は「テーマに取り組む=責任を負う(任せられる)」ことを能動的義務と認識します。
マネジャーとしては、経営方針を展開して部下に割り当てる際に、部下がテーマを能動的義務と捉えるように工夫すべきなのです。

6.部下がテーマを能動的義務と捉えるには

部下にテーマを能動的義務と捉えさせるには、次の3つの条件をクリアする必要があります。

条件1 企業の目標と個人の目標のベクトルを一致させる

企業の目標を部下にとっての能動的義務とするには、組織としての目標と個人の目標のベクトルが一致しなければなりません。
つまり組織の目標に取組み達成することが、個人の目標達成と一致するようにします。
個人が自分のビジネスパーソンとしての生き様をしっかりと描けており、マネジャーから与えられた仕事はその実現の手段と捉えている状態です。
そのために必要となるのが個人のキャリアビジョンです。
つまりビジネスパーソンとしての人生をどう生きたいかを明らかにすることが重要です。
※キャリアビジョンの明確化は、昇格時に実施する「昇格者集合研修(等級別)」など人事部門主導で実施します。いわゆるCDP(Career Development Program)の一要素となります。

条件2 自律的な取り組みをさせ、成功体験を持たせる

能動的に動機づけするためには、部下に自信を持たせる必要があります。人は自信がない状態で能動的にはなれないからです。
自信は「有能感」から生まれるものですが、有能感を持たせるのに最良なのが「成功体験」です。マネジャーとしては部下に対し、継続的に挑戦的なテーマを与えて取り組ませ、達成に至るまでの各フェーズにおいて支援を続け、各テーマを達成させていくのです。
テーマを達成できたら部下の成長を「承認」することにより、部下に自信をつけさせられます。

条件3 部下本人に決めさせる(自己決定)

テーマを達成するには、ゴールまでに様々な取り組みが必要です。部下のテーマ達成はマネジャー自身のテーマ達成にもつながるので、マネジャーの中には次々に指示を出してしまう方がいます。
しかし、これでは「統制」になってしまいます。
そうではなく、次のように部下が「自己決定」できるようなマネジメントが求められます。
①細かい指示を出さずに部下自身に考えさせる
②複数の選択肢を示して部下に選択させる

以上のように組織としての仕組みと適切なマネジメントの方法を構築し、経営方針管理と目標管理をうまく連動させる状態を作ってください。

© 2015-2020 Stream Management Consulting Co., Ltd.