SMCコラム

人材育成体系の考え方1(役割を果たせる社員を創造する)

人材育成体系は、内容が多岐に亘りますので、4章に分けてご説明します。

目次は次のとおりです。

1.役割を果たせる社員を創造する人材育成体系
2.人材育成のための集合研修例
3.人材育成体系の運用とキャリアプラン
4.中長期の人材育成戦略

なお、等級については役割等級制度をベースとします。
(役割等級制度については、等級制度の考え方を参照ください)

1.役割を果たせる社員を創造する人材育成体系

役割等級制度では、等級ごとに各社員の役割を規定しますが、実際に等級制度を効果的に運用するには、「期待された役割を果たせる社員」を育成する必要があります。
適切な人材がなければ、昇格させても新しい役割を果たせず、あるいは果たせるようになるまでに非常に長い時間を要します。
したがって、効率的な企業運営のためには、等級制度と同時に人材育成体系の構築・運用が重要となります。図表1の例で説明します。

図表1.等級と経営マネジメントの役割分担

人材育成体系が構築されていなければ、次に示す役員や上級管理層に期待される役割を果たすためのスキルを身に付けるのは困難です。

【役員、上級管理層に期待される役割】
・将来構想(=ビジョン設定)
・全社、部門の戦略策定(詳細は経営計画・経営方針を参照ください)
・マネジメント(詳細はマネジメント基礎を参照ください)

ここで役員や上級管理層に期待される高度な役割とカッツモデルとの関係をご説明します。
カッツモデルとは、ハーバード大学教授のカッツ・ロバート・L氏が提唱しているスキルに関するモデルです。

役員や上級管理層に期待される役割は、カッツモデルでいうテクニカルスキル「業務遂行能力」ではなく、コンセプチャルスキル「概念化能力」とヒューマンスキル「対人関係能力」です。

【参考文献】Katz,R.L. (2009) Skills of effective administrator, Harvard Business Review Classics.

コンセプチャルスキル「概念化能力」とヒューマンスキル「対人関係能力」は、テクニカルスキルとは異なり、知識を得れば身につく性質のものではありません。
知識は当然の前提としつつ、実際の仕事で実践し、時には失敗もしながら自分の中に取り込むことにより、本物のスキルとして昇華させていくものです。
帰納的・演繹的なアプローチを反復継続しながら自ら成長に結び付けていきます。

こうしたスキルは習得までに時間がかかるため、昇格前の段階で準備しておく必要があります。

図表1の例でいうと、8等級在籍中に1段階上の上級管理層の知識の基本を理解させ、可能であれば実務も代行させます。

テクニカルスキルは、実務に直接関係するので教育体系を構築している企業が多いのですが、実際にはそれだけでは不十分です。経営的な視点から見るとテクニカルスキルは保有していて当たり前であり、それを超えて組織運営にかかわる役割を担えることが必要です。

管理層以上の人員が戦略策定やマネジメントをできなければ、非管理層の社員が経営方針を理解できず自己判断で行動し、最終的には組織が機能不全を引き起こして経営方針を実現できないリスクが高まります。

たとえば営業部門で営業成績優秀者が若くして管理職になった場合、高度な営業のテクニカルスキルを持っていてもマネジメン

このようなことを発生させないため、上級職に就かせる社員には昇格前にコンセプチャルスキルとヒューマンスキルを身につけさせる必要があります。

そのために構築するのが「人材育成体系」なのです。

参考までに、当社がコンサルティングで使用している「人材育成体系の構築ステップ」は図表2で示すとおりです。

図表2.人材育成体系の構築ステップ

Step

テーマ

内容

等級別人材像の明確化

役割等級制度では等級別に求められる役割を規定しているので、その役割をもとに人材像を明確化します。必要に応じて、職種別の内容も規定します。

等級別人材像に到達させる
人材育成方針・内容の設計

1で明確化した人材像に応じて、人材育成方針と育成内容を設計します。
(例)育成方針:学びの場の提供(実務、実務外)
育成方法:OJT/Off-JT/自己研鑚/異動

人材育成状況の現状分析

社員一人ひとりについて、育成状況を分析します。
※実務的には一次評価者が状況を把握します。

新しく規定された人材育成のための内容があれば、必要に応じて判断基準を設けます。

個人別育成目標設定と運用

現状分析結果に基づき、現在の等級において未修得で重要な点から重点的に人材育成を進めます。
社員一人ひとりのキャリアの棚卸しを行い、個人別に目標設定し、育成計画を立てて運用します。
知識については集合研修によって習得させる方法も有効です。

人材育成目標の結果
フィードバック

一定期間(半期または1年)人材育成計画を運用してきた結果を確認、結果をフィードバックして次期の人材育成目標を設定します。

上記のステップで最重要なのは「4.個人別育成目標設定と運用」「5.人材育成目標の結果フィードバック」です。
4で「知識を得るためには集合研修を利用すると有効」と書きましたが、コンセプチャルスキル、ヒューマンスキルを伸ばすには、集合研修に参加させるだけでは足りません。
集合研修はあくまでも知識を得るためだけのものなので、受講後は実務に取り入れて経験させながらスキルを伸ばす必要があります。

人材育成の際には、普段の仕事も並行して進めなければならないので困難を伴いがちです。本人にしてみれば、現等級における日々の業務をこなしつつも、将来の昇格を見据えて新たな知識を得て実践していく必要があり、すべてこなすには相当強い意志を持って推進していかねばなりません。
(なお当社では、この育成推進を強力にサポートするための「 アクションラーニング型育成プログラム 」を用意しております)

このように人材育成には難しい点があるため、個々のマネジャーの度量や努力のみに任せていては実現不可能なのです。
効率的な人材育成のためには、会社として統一的な人材育成体系を構築し、社内全体の「仕組み」として運営していく必要があります。

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