SMCコラム

営業力強化の考え方と人事評価4(営業プロセス/業務プロセス1)

6.業務プロセス(1)

【営業プロセス3】受注成約後から納品(サービス提供)完了するまでの「業務プロセス」

1)引合プロセス、商談プロセスからの一連のフローにおける業務プロセスのポイント
業務プロセスは、受注した商品を手配して納品(サービス提供)完了するまでの過程です。
「納品(サービス提供)完了」とあえて「完了」を表現している理由は、物理的に納品する瞬間までではなく、納品後に顧客が目的を果たす(メリットを感じる)瞬間までをこの「業務プロセス」で取り扱うためです。

往々にして、物理的な納品をもって案件がクローズしたと判断し、あとは請求するだけと思い(前払いの場合は、請求もすでに完了している)、当該案件が意識の外に飛んでしまう営業員がいるものです。しかしこれでは営業力を強化できません。

営業的には、顧客が目的を果たす(メリットを感じる)ことができて初めて納品「完了」となり、案件がクローズすると考えるべきです。
顧客にとっては商品受領後に実際に使用することが、目的を果たすための「本番」ですから、営業員はその段階まで案件に関心を寄せ続けなければなりません。

当社の例で申し上げます。
当社ではWebマーケティングを重要視しているので複数の会社のサービスを利用し、それぞれにある程度の金額を投資しています。
しかし、サービスの導入後「反響はどうですか?」「当初の目的を果たせていますか?」などサービス提供後に当社の目的達成の可否や程度にまで関心を寄せてくれる会社はありません。
営業段階では熱心に「御社の目的の実現に寄与します!」とセールストークをしていても、売上が計上されてしまえば、ほとんどの会社が顧客の目的達成になど関心を持たないのが現実なのです。

このような場合、よほどそのサービスの効果を実感できないと継続的に利用しようと考えません。

当社では、業務プロセスにおける活動ポイントは次の4点と考えています。

①顧客対応において顧客側担当者の存在感を高める
②顧客の要望にクイックレスポンスで応える
③仕様的に充分な品質を持った商品を納期通りに(物理的に)納品する
④納品後に顧客が目的を果たせたかを確認する

※とくに④が重要です。

これより、①~④について解説してまいります。
なお業務プロセスは、業態によって活動内容がかなり異なります。そこで本稿では、読者の皆様がイメージしやすいように業態を絞り、「メーカー」を例にとって解説してまいります。
※商社やサービス業などの非製造業の方はもちろん、メーカーの方であっても自社の活動に置き換えてご高覧ください。

①顧客対応において顧客側担当者の存在感を高める

発注後は納品までに確認しなければならない事項が多々ありますので、営業員と顧客側担当者との間でメールや電話による接触が何度も行われます(場合によっては、顧客が来訪されるケースもあります)。

メールであれば、担当の営業員が対応するので問題にはなりにくいのですが、その他の接点、例えば電話を掛けてこられて他の従業員が応じる場合の対応が今後の取引にとって重要です。

担当の営業員以外が電話応対した際、次のようなことができるかどうかが取引継続に影響します。
・顧客の企業名、担当者名を1回で聞き取る
・自社の営業員がお世話になっていることのお礼を伝える

例えば、
顧客名「東京インタレスト・マニュファクチャリング株式会社」
顧客担当者名「勘解由小路」
自社の営業員「山田」
のケースで見てみましょう。

【顧客担当者の勘解由小路さんが、自社の営業員 山田さんに電話してきたケース】

電話応対者

お電話ありがとうございます。『(会社名)(応対者の苗字)』でございます。

顧客

東京インタレスト・マニュファクチャリングの勘解由小路です。

電話応対者

東京インタレスト・マニュファクチャリングの勘解由小路様ですね。いつも山田がお世話になりありがとうございます。

このように、聞き取りにくい社名や難解な苗字でも1回で聞き取り、先方が名指ししなくても、すぐさま担当している営業員の名前を言えることが大切です。

顧客側担当者のことを、担当している営業員だけでなく、「会社全体」として認知していることを自然な振る舞いで示し、顧客に「この会社は私のことをしっかりと把握してくれている」という存在感を認知してもらい、気持ちの良い取引関係を構築するのです。

なお、このような対応は個々人の意識に任せていては実現できません。
業務プロセスのみならず営業プロセスを含め、会社全体として顧客にどのように対応するのかを設計していく必要があります。顧客接点の応対設計は組織的な営業力強化の基盤となります。

②顧客の要望にクイックレスポンスで応える

①でも述べましたが、商品の発注後は納品までに確認すべき事項が多々あるため、顧客からいくつかの要望が出てくるものです。
業務プロセスとしては、これら要望へのレスポンスを継続的に早くすることが重要です。
ここで「遅い!」と思われてしまうと、今後の案件の受注成約率に悪い影響が出てしまいます。

別案件で引合プロセスや商談プロセスが同時進行していると、営業員はどうしてもそちらの案件に力を入れてしまいがちです。しかし業務プロセス進捗中の案件からも気を抜いてはなりません。
なお顧客の要望内容に対する合理的なレスポンス期限については、担当している営業職員が独自に判断するのではなく、組織的に判断できる体制を整えてください。

③仕様的に充分な品質を持った商品を納期通りに(物理的に)納品する

発注後、商品が納品されるまでの顧客の関心事項は「発注した商品が期日までに問題なく到着するか」の一点に尽きます。
物理的な納品がないと顧客が商品を使って目的を果たすための行動を開始できないので、責任は重大です。顧客側担当者も顧客社内で周りからプレッシャーをかけられているでしょう。「頼むから、ちゃんと納品してくれ」と心の中で呟いているはずです。

このとき、取引関係が浅ければ相手は「不安感」をもって商品が適切に納品されるのを待っていると推察すべきです。

したがって、可能な範囲で進捗状況(途中経過)を顧客に報告し、安心感を与えることが重要です。顧客側が常に「自分が発注した案件が順調に進捗している」と認識できるようにしてください。
そのためには会社の仕組みとして「どの段階で進捗を顧客に報告するか」を事前に決めておく必要があります。

④納品後に顧客が目的を果たせたかを確認する

業務プロセスで最重要なのは、納品後に実際に商品を顧客に使用していただいて、当初の目的を果たせたかどうか確認することです。そもそも目的を果たせるかが当該案件の出発点ですから、商品によって目的を果たせなければ、次はありません。
最大限の関心をもって確認を進めてください。

担当している営業員が丁寧に相手の目的達成の可否や度合いを確認すると、顧客側から「自分たち(顧客)のことを真剣に考えてくれている営業担当」との評価を受け、信頼関係の基盤を構築できます。
また、この確認作業により、顧客メリットや商品使用状況に関する情報も得られます。
こうした情報は守秘義務に抵触しない範囲であれば、今後の水平展開の提案ネタにもつながっていき有意義です。

【業務プロセスの人事評価項目事例①】
業務プロセスにおける人事評価項目の例を挙げます。
商談プロセスの解説の際に申し上げましたが、売上は業務プロセスで計上されます。そこで人事評価項目としては売上・利益の「絶対額」または「目標達成率」が挙がってきます。

なお繰り返しになりますが、売上・利益よりも商談プロセスの「受注成約率」の方が営業機能にとって重要な指標であることは、忘れずに頭に入れておいてください。

この他の評価項目例として、以下のようなものがあります。
納品時(顧客の受入検査時)の「営業員起因の不適合率」
業務プロセスでの「営業員起因の顧客クレーム数」
納品後の「商品使用情報収集率」

※上記はあくまでも例示です。御社の業務プロセスの核となる行動を指標化し、営業の人事評価項目に設定してください。

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