SMCコラム

経営方針管理と目標管理4(経営方針のマネジメントシステム構築1)

8.経営方針のマネジメントシステム構築のポイント

ここまでは、目標管理に焦点を当てて解説してきました。
この8章からは、もう一方の経営方針管理に焦点を当てて解説してまいります。
はじめに、経営方針管理のためのマネジメントシステム構築のポイントを解説します。

経営方針のマネジメントシステム構築は、次の3点が重要です。

1.正しい管理手段を採用する

頭の中だけで管理しようとすると、いくつもの管理指標を思いついても結局その使い道が分からず、行動に結び付けにくくなります。そうならないよう、正しい管理手段を構築して採用します。

2.仕事(=プロセス)の生産性向上を目指して管理する

仕事(=プロセス)についてはアウトプットを管理し、成果が最大化するよう設計すべきです。これにより仕事(=プロセス)の生産性が高まります。

3.仕事(=プロセス)の対象ごとに管理方法を変える

仕事を定型と定形外に分けた場合、定型の仕事とは別に定形外の仕事をどう管理するべきか、充分に設計しておく必要があります。定形外の仕事の管理方法が決まっていないと組織が混沌状態に陥る危険も高くなります。定型と定型外の業務に対する管理方法を意識して区別してください。

3点を解説します。

1.正しい管理手段を採用する
管理手段のポイントとして、ドラッカーは次の7点を挙げています。

(1)効率性
管理手段は効率的でなければならない。必要とする労力が少ないほど優れたマネジメントである。少なくてすむデータほど優れたデータである。データの種類を多くしても、よりよくマネジメントできるわけでない。

(2)意味性
管理手段は重要な意味をもつものでなければならない。瑣末なことについてデータをとってはならない。重要でないことについてデータをとることは、本当のマネジメントを放棄することを意味する。

(3)適切性
管理手段は対象とするものに適したものでなければならない。これは管理手段の要件として最も重要でありながら、ほとんど守られていないことである。

(4)精密性
管理手段は事象の精度に即したものでなければならない。一見根拠があるかのごとき詳細な数字よりも、概算のほうが正確たりうることを知る必要がある。概算よりも数字の幅のほうが、さらに正確たりうることを知らなければならない。さらには、数字の幅よりも、「より大きい」「より小さい」「より早い」「より遅い」「上へ」「下へ」なる表現が十分に定量的であって、より正確かつ厳格であることを知らなければならない。

(5)適時性
管理手段は時間間隔が適切でなければならない。精度と同じことは時間間隔についてもいえる。頻繁な報告や迅速な報告が、よりよいマネジメントを意味するわけではない。

(6)単純性
管理手段は単純でなければならない。データによる管理は、複雑であっては役に立たない。事態を混乱させるだけである。データを取る対象ではなく、データをとる方法のほうに関心がいってしまう。

(7)実用性
管理手段は行動に焦点を合わせなければならない。管理手段は行動志向でなければならない。データの目的は情報収集ではなく行動である。

P.F.ドラッカー著 上田惇夫訳 『ドラッカー名著集14 マネジメント [中] -課題、責任、実践』(ダイヤモンド社、2008年、164頁~173頁を一部抜粋)

たった7つの条件ですが、重要な示唆をしてくれています。
多くの方がイメージできるように、営業機能においてこの7条件を考えてみましょう。

下表は当コラムの「 営業力強化の考え方 」で示した営業機能の標準的な管理要素です。
7条件を満足するための管理要素を解説します。

図表2.標準的な営業管理要素

カテゴリー

No.

管理種別

年間

四半期

月間

週間

営業シナリオ

1

取組

内容

内容

2

接点・訪問

件数

件数

件数

事前進捗

3

提案

件数

件数

件数・内容

内容

案件

4

引合(能動・受動別)

件数

件数

件数・内容

内容

5

商談

件数

件数

件数・内容

内容

6

受注成約件数(率)

件数・率

件数・率

件数・率

7

業務

件数

件数

件数

内容

実績

8

売上

金額

金額

金額

9

利益

金額

金額

金額

活動全体

10

達成率

11

時間配分

時間数

時間数

時間数

時間数

(1)効率性、(6)単純性
上記11種類の営業管理要素は「営業シナリオ」「案件管理表」「営業日報」で管理することが可能です。情報を入力する対象(管理帳票など)を上記の3種類に絞り込んでデータベース化し「効率性」と「単純性」を実現します。
このようにすると、データが分散してほしい情報を集めにくくなる状態を避けられます。
ツールとしては営業管理ソフトまたはエクセルを使用すると良いでしょう。

(2)意味性、(3)適切性
11種類の営業管理要素のうち、No.1~7とNo.11の8種は営業活動のプロセス管理、No.8、9の2種が活動結果の管理、No.10がその全体を俯瞰するための要素となっています。これらはそれぞれ営業戦略実現のための核となる管理要素ですから、各々適切にマネジメントすることによって営業力強化のための基盤とすることが可能です。
また必要に応じて、それぞれの要素を分解した指標を管理します。例えば、No.8の売上では、商品別売上や顧客別売上に分けます。要素の分け方は、営業シナリオの内容に応じて定めます。

(4)精密性
精密性については、例を出してご説明します。
営業シナリオにおける取組内容の1つとして「顧客内シェアの増減」があります。しかし基本的に顧客内シェアは正確に把握できない類の情報です。従って、精度を細かくして小数点以下などの数値にこだわるのではなく、シェアを「増やすのか」「減らすのか」をまず示します。その上で目標値として、10%、20%、25%、40%などの具体的な数値を記載すれば十分です。

(5)適時性
上の表ではそれぞれの管理要素ごとに、望ましい管理間隔を示しています。適時性を実現するためのポイントは、営業戦略実現のためにどのような間隔(頻度)で修正行動を検討するのが最適かを考えることです。

(7)実用性
11種類の営業管理要素のうち、No.1~7とNo.11の8種は営業活動そのものの指標です。
それぞれの件数や達成率が、次の打ち手を検討し明らかにするための材料となります。
そこでこれらについては次の一手を考えるために最小限の要素に設定し、実用性をはかっています。

以上のように、効率的・効果的な管理要素をもって活動を管理することが重要です。
営業以外の機能でも同じことがいえます。

「管理のための管理」に陥らないよう「組織」として管理要素を設計し、部門活動の継続的な改善や目的(成果)を達成できるマネジメントの仕組みを構築してください。

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