SMCコラム

営業力強化の考え方と人事評価2(営業プロセス/引合プロセス)

3.営業プロセスとは

営業プロセスとは、営業力強化のために営業活動の過程や方法を会社(営業部門)が設計するものです。
当社が営業コンサルティングを実施するときは、次に示す5種の営業プロセス(以降「ペンタゴン営業プロセス」といいます)をベースにして、会社特有の営業形態に合わせてカスタマイズしています。

図表1.ペンタゴン営業プロセス

大プロセス 中プロセス プロセス内容 小プロセス
営業活動プロセス 受注
プロセス
引合プロセス 新規案件の引合を獲得する活動 10プロセス
商談プロセス 引合後に受注成約する活動 15プロセス
業務プロセス 受注成約後、納品(サービス提供)完了するまでの活動 15プロセス
深耕プロセス 既存顧客を深耕して、より多くの案件やシェアを得る活動 5プロセス
営業管理プロセス 営業員全体の活動を管理し、会社対顧客の関係を構築する活動 15プロセス

これより、この「ペンタゴン営業プロセス」について、営業活動と人事評価のポイントを解説してまいります。

4.引合プロセス

【営業プロセス1】 顧客に提案して、新規案件の引合をいただく「引合プロセス」

引合プロセスは、顧客に能動的に提案して新規案件の引合を「積極的に創り出す」活動です。

顧客からの引合を受動的に待つのではなく、能動的に提案して案件を創造します。
営業員の力量によってかなり差が出るプロセスでもあり、優秀な営業員は必ず実行しています。
また引合プロセスは、顧客の心理を肌で感じながら進めていく必要があります。

顧客から引合を得られるまでの過程は、顧客の心理過程に着目すると、おおむね次のようになります。

図表2.引合プロセスにおける顧客の心理過程と営業の行動

顧客の心理過程

営業の行動

1.認知

自社の「会社の安心」と「商品の安心」を伝え、顧客に自社と商品が安心できるものと認知してもらう
※新規顧客の場合は、必ず実施します
※既存顧客の場合、新たな情報があれば実施します

2.気づき

顧客に、自社の商品によって「目的を果たせそうだ」と気づいてもらう
※これが一次提案です
※顧客目線で説明し「顧客メリット」を理解していただき、商品提供後の状態をイメージしてもらうことがポイントです

3.不安発生

顧客から投げかけられる質問に全て回答します。
また過去事例のQ&Aの紹介や、今回の課題解決に類似する事例を開示できる範囲で説明します。

4.再認知・納得

上記の説明を文字化することによって顧客に商品についてしっかりと理解してもらいます(再認知)。
不安が解消され、「納得・受け入れ」ができた状態となります。
※これが二次提案です

引合発生(案件化)

当社が営業コンサルティングを実施する場合は、引合プロセスを標準で10工程に分け、工程ごとに実行すべき内容を設計して、営業力強化を目指します。

引合プロセスで特に重要なのは、図表2の「2.気づき」にある
「顧客視点で説明し顧客メリットを理解していただき、商品提供後の状態をイメージしてもらうこと」
です。

顧客は「ある目的を果たすために、手段として商品を購入」するので、「目的を果たせること」が「顧客メリット」となります。顧客メリットがなければ、商品を購入することはありません。商品購入自体は目的ではないからです。

営業員としては、自社の商品がいかにして顧客の目的達成に役立つのかを、顧客に気づかせなければなりません。最終的には、商品を購入して目的を果たしている状態をしっかりと頭の中にイメージしてもらう必要があります。
顧客メリットをしっかりと伝えてイメージしてもらうことが「顧客視点で説明する」の真の意味です。

どのような商品であっても、上記の過程は顧客に購買行動してもらうための基本です。

しかしながら、未だに多くの営業員が顧客の視点ではなく「自社の視点」から商品を説明しており、提案書における商品説明が商品カタログとほとんど変わらない状態になっています。すなわち商品の良い点(仕様などの特長)を中心に書いているだけで、顧客メリットがほとんど書かれていません。

自社視点で商品の良い点(仕様などの特長)だけを伝えても、顧客が目的を果たせるかどうかが明らかになりません。顧客メリットがあるかどうかは、顧客自身が考えなければならず、購買につながりにくい状態になっています。
これでは単なる「商品説明」であり、「提案」とはいえません。

「提案」とは、自社商品が顧客の目的達成に貢献できる(顧客メリットがある)ことを説得的に示し、顧客自身が目的を果たした情景を具体的に描けるようにすることです。

このように「提案」を定義すると、本当に「提案」できているかどうかは、営業員によって大きな差が出てきます。
正しく「提案」を行うには、事前に情報収集を行って営業員自身が顧客の目的を把握している必要があります。
情報収集が難しい場合は、「顧客が置かれている状況からすると、こういった目的があるはず」と仮説を構築しなければなりません。

自社視点で商品説明する営業しか行なっていない会社では、こういった「情報収集・仮説構築」にもとづいた「提案」の発想が希薄です。

一度、御社の営業活動について、本当の意味での「提案」が行われているかどうか、検証することをお勧めいたします。

参考までに、当社の営業コンサルティングでは、「顧客メリット」を前提に作りこんだ標準提案書を利用することにより、営業員が正しく「提案」できるようにしていきます。
仕組みによって営業員の提案力を底上げするのです。

【引合プロセスの人事評価項目事例】
営業の人事評価項目として、「提案件数」という指標を用いると有効です。単に提案書を持参しただけでなく、適切に「顧客メリット」を説明して、顧客に気づきを与え目的を果たしている情景を描かせることができた段階で1件とカウントします。

次に提案に基づいて実際に顧客から引合があった場合の「提案によって創造した引合件数」も指標とすることが可能です。

経験の浅い営業員の場合「商品別 顧客メリットの知識量」によって営業員の顧客メリットに対する知識を評価する方法も効果的です。こうした評価制度を適切に運用すれば、営業員の早期の戦力化につながります。

※上記の評価項目はあくまでも一例です。御社の引合プロセスの「核となる行動」を指標化し、営業の人事評価項目に設定してください。

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